サステナビリティの精神を体現―サステナブル・ブランド国際会議2019東京(3)

2019年3月6日―7日、お台場にて開催された「サステナブル・ブランド国際会議2019東京」の様子をお届けしています。


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他セッションの様子はこちら

ESG投資とTCFDで輪を広げよう―サステナブル・ブランド国際会議2019東京(1)
・「サステナブル・ブランド国際会議2019東京」とは?
・「投資先をリ・デザインするESG」セッションのレポート

SDGsの目標18は笑顔?―サステナブル・ブランド国際会議2019東京(2)

・「次世代CSV(価値創造)経営とは何か」セッションのレポート
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セッション3 SDGs:マッピングの一歩先

SDGsと聞いてまず皆さんが思い浮かべるのは、カラフルな17つの目標のアイコンではないでしょうか。
SDGs17つの目標(国連広報センターWebサイトより)

SDGsの普及が進む中で、事業会社の報告書やウェブサイトには、17つの目標アイコンと自社の事業をマッピングして分かりやすく表示することが多くなってきました。今回のセッションは、そんなSDGsマッピングの一歩先を行くSDGs先進企業によるディスカッションです。

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ファシリテーター】
SB東京 サステナビリティ・プロデューサー
株式会社レスポンスアビリティ 代表取締役 足立 直樹氏

【パネリスト】

株式会社リクルートホールディングス シニアパートナー
SDGパートナーズ有限会社 代表取締役CEO 田瀬 和夫氏

株式会社リクルートホールディングス 執行役員 

Indeed, Inc. Chief of Staff 瀬名波 文野氏

味の素株式会社 常務執行役員 グローバルコーポレート本部副本部長

兼コーポレートサービス本部副本部長 吉宮 由真氏
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味の素のASV戦略

まず、味の素の吉宮氏が、同社のASV (Ajinomoto Group Shared Value)の取り組みを紹介。

「日本人の栄養を改善したい」という思いから生まれた同社は、創業以来一貫して、事業を通じた社会課題の解決に取り組んでおり、事業を通じた社会的課題解決に取り組み、社会・地域と共有する価値を創出することで経済価値を向上し、成長につなげてきました。


この一連の取り組みをASV (Ajinomoto Group Shared Value)と名付け、進化させていくことを中期経営計画の核としています。具体的な取り組みとしては、(1)ベトナムにおける栄養改善プロジェクトや(2)東北エリアにおける「減塩・適塩」の取り組み等があります。

味の素 吉宮氏

(1)ベトナムにおける栄養改善プロジェクト
学校給食メニューの改善や調理者の教育サポート、児童の食育サポート、栄養学部創設などを通じて、ベトナム国民の栄養バランスの改善などの社会価値に貢献するとともに、自社調味料の給食での使用拡大、企業価値向上・ファン増加などの経済価値をもたらしました。

(2)東北エリアにおける「減塩・適塩」の取り組み

食塩摂取量が男女ともにワースト1という岩手県の社会課題を、減塩メニューの提案や減塩セミナーの実施などによって解決していく取り組み。同県の減塩に貢献しただけでなく、家庭用減塩製品の売り上げが145%増加するなど経済価値ももたらしました。

サイクルを回す

続いて、リクルート/Indeedの瀬名波氏が同社の取り組みを紹介。
同社では、サステナビリティに関わる取り組みの全体像を「サステナビリティオービット」と名付けて整理しています。
サステナビリティオービット(リクルートホールディングスWebサイトより)

ユーザーやクライアントのみならず、地域社会やNPO・NGOも含めたステークホルダーとの対話を通して広く社会からの要請や期待を認識した上で、取締役会の諮問機関の一つとして設置されたサステナビリティ委員会で議論します。その後、経営陣のコミットメントを得て、行動指針に沿って具体的なサステナビリティ活動を推進しているそうです。


同社では、フレームワークを使って、社会課題をマッピングし、今すぐに対応すべきことは何か、今後流れが変わるテーマは何か、などを常に整理して計画・行動につなげているとのこと。同社の強さの秘密の一つを見た気がしました。

ありたい姿から考える

クルート/SDG パートナーズ 田瀬氏は、SDGsへのビジネスの関わり方を6つに分類。
(1マッピング
(2)マッチング
(3)インクルーシブ、社会的インパクト投資
(4)自社方針が強く、SDGsは参照手段
(5)経営理念への埋込、経営方針への実装
(6)ESG投資対応

(1)自社の事業をマッピング
してSDGsへの貢献を分析する、(2)社会課題と解決策をアイディアでつなぐことで価値を見出す、(3)SDGsの要請に直接応答するビジネスを創出するなどに触れた後で、本セッションの本題であるSDGsをどう経営にとけこませるかという話に移ります。

リクルート/SDGパートナーズ 田瀬氏

 田瀬氏曰く、(5)経営理念への埋込/経営方針への実装に大切なのは時間的逆算志向、論理的逆算志向、リンケージ思考の3点とのこと。それぞれ「SDGs的ムーンショット」「デザイン思考イノベーション」「SDGsドミノ」というキーワードで説明されました。


「SDGs的ムーンショット」は、人類初の月への有人宇宙飛行計画のように一見無謀だと思われる壮大な目標であっても夢に向かって努力すれば実現するというムーンショット的思考がSDGsにも適用出来るということ。

2040年までにマラリア被害ゼロを目指す「ZERO by 40」プロジェクトを例にとり、常に科学技術の発展は人間の予測を超えるので、マラリア撲滅は不可能に思えるが、この壮大な目標は実現するかもしれないとコメントしました。

「デザイン思考イノベーション」は、論理を積み上げて結論を出す昨今のビジネス的な考え方ではなく、SDGsの「ありたい姿」から演繹的に考えるということ。

SDGs3.6の「交通事故死者数半減」という目標を例にすれば、自動運転やスマート信号機などの解決法は車に乗ることを前提としているが、この目標を達成するためには、自宅勤務を進めるなど車に乗らない生活へのシフトも手段になりうると説明されました。普段の自分の考え方がどれほど凝り固まっているかを考えさせられるひと時でした。

「6.ESG投資対応」については、「どんどん伸びていっているが、本質を理解している事業会社は2割程度ではないか」と述べ、SDGsとESG投資対応を進める上では、経営に常に必要な情報が必要なタイミングで上がるメカニズムやそのための対話・分析・トレンドの把握が出来る社内での専門性の確立が重要であるとまとめました。

SDGsドミノでコア目標からの連鎖を

リクルートの瀬名波氏と田瀬氏のお話で興味深かったのは「SDGsドミノ」。
SDGsの目標はすべてつながっており、影響を及ぼし合っているゆえに、6つの目標への取り組みは、一つひとつ独立して行うものではない」という考えの下、同社のコア目標「10.人や国の不平等をなくそう」に取り組むことで、ドミノのように連鎖反応を起こして他の目標の達成につなげていく様子からSDGsドミノと名付けています。


リクルートグループのSDGsドミノ(リクルートホールディングスWebサイトより)

リクルート/Indeedの瀬名波氏
同社のイメージは働き方改革(目標8)でしたが、コア目標を10「不平等」に置いたのは、「機会の不平等を失くす」のが同社のコアだからとのこと。

「働く女性を応援する求人・転職サイト『とらばーゆ』は1980年創刊。男女雇用機会均等法の制定(1985年)前から、女性の不平等を失くすための取り組みを始めていた。」と瀬名波氏。


田瀬氏も、同社のWEB学習サービス「スタディサプリ」を例に、「このサービスが貢献するのは目標4(質の高い教育)だけど、なぜこれをやりたいかというと、不平等を失くしたいから。学習機会の不平等がない世界っていいよね、という思いが根底にある。」と述べ、とにかく自社のレバレッジポイントを経営層と議論して深く考え見つけることが大事。自社しか出来ないことを鍛えるのが全て。」と締めくくりました。

目の前の短期的な成果以外にも目を向けよう

ファシリテーターを務めた足立氏
ファシリテーターのSBT東京・足立氏による「事業会社は(収益を出さないと事業が継続できないので)SDGsだけに取り組むことはできない現状があるが、実際にどこまでやるべきか?」との問いかけに各パネリストが答えます。
  • 事業化できないものは財団に移して継続している。例えばガーナの発育プロジェクト、ベトナムの栄養プロジェクトや被災地での赤いエプロンプロジェクト。財団に移す意義は、行政やアカデミアと連携しやすくなること。(味の素 吉宮氏)
  • 世の中にあるテーマの中で、自分たちのテーマに関連の高いものは何か、だけを考える。SDGsは数値化の時に使う定量化のツール。そうでないと本質を見失う。とはいえ、SDGsという共通言語が出来たことは、グローバルで見ると大きなインパクトがある。(リクルート/Indeed 瀬名波氏)
  • SDGsは多国間の交渉の結果まとまった数値目標に過ぎない。それに振り回されず、SDGsの趣旨、精神を考えるべき。No one will be left behind(誰一人取り残さない)、これがSDGsの根底。Purpose(目的)ベースで考えることが必要。味の素やリクルートはSDGs目標に合致しない取り組みも行っているかもしれないが、SDGsの趣旨には合致している。(リクルート/SDG パートナーズ 田瀬氏)

本セッションでは、フロアからの質問でも大いに盛り上がりました。

SDGsは競争戦略ではなく共創戦略が大事だと思うが、同業他社と関係はどのように考えているか?

  • コンペティター(競争相手)との差別化戦略ではなくて、例えば「減塩」の取り組みなどでは、一つの課題に取り組む仲間と捉える。調味料メーカーとしては競争相手になるが、食品業界がどうあるべきかを考えると協働できる仲間になる。(味の素・吉宮氏)
  • お金の儲け方には、良い儲け方と悪い儲け方がある。経済学的にはプラスサムとゼロサム。サステナビリティはプラスサム。経営者がそれを腹落ち出来るかが重要(リクルート/SDG パートナーズ 田瀬氏)

本セッションのタイトルは「マッピングの1歩先」だが、2歩先、3歩先も聞きたい!

  • 2歩先、3歩先はこれから。但し、SDGsを経営に実装する会社は徐々に増えていて、一歩進んでブランディングにつなげる。そして、更に進めて、採用活動にまでつなげている会社もある。長期投資家と同じ視点を持つ人たちは誰か?それは学生。就職は自己投資。だから彼らは長期的な目で会社を見ている。(リクルート/SDG パートナーズ 田瀬氏)

長年続いてきた先進国による途上国の搾取の構造、これをサステナブルにするためのSDGsになっているきらいがある。SDGsは欺瞞ではないか?

  • 先日訪問したパプアニューギニアでは、環境より開発、という声が聞かれた。このような途上国は多いかもしれない。SDGsやESGは、彼らに対して別のソリューションを提供できるかもしれない。先進国が通ってきた失敗をせずに、ソリューションを見出すべき。(リクルート/SDG パートナーズ 田瀬氏)

最後に:神は細部に宿る

このようなイベントの際、基本的に登壇者に飲み物を用意しますよね。本セッションでは、登壇者全員がSB(サステナブル・ブランド)ロゴシールを貼付したウォーターボトル(と横文字で言ってみましたが「水筒」です!)を持っていらっしゃいました。素敵!


サステナブルな水分補給方法にも注目














サステナビリティやエコ関係のイベントを開催する際は、このような細部にも精神を宿すよう意識してみてください。参加者の方は、そのような観点からもチェックしてみてくださいね!

(他のセッションは?と気になった方は以下からご確認下さい)

ESG投資とTCFDで輪を広げよう―サステナブル・ブランド国際会議2019東京(1)

SDGsの目標18は笑顔?―サステナブル・ブランド国際会議2019東京(2)

3回にわたって、サステナブル・ブランド国際会議2019東京のイベントレポートをお届けしました。全3回ご覧いただいた皆さん、ありがとうございました!


次回は2020年2月19日―20日に横浜開催予定とのこと。楽しみですね!

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