SDGsの目標18は笑顔?―サステナブル・ブランド国際会議2019東京(2)

201936日―7日、お台場にて開催された「サステナブル・ブランド国際会議2019東京」の様子をお届けしています。

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他セッションの様子はこちら

ESG投資とTCFDで輪を広げよう―サステナブル・ブランド国際会議2019東京(1)
・「サステナブル・ブランド国際会議2019東京」とは?
・「投資先をリ・デザインするESG」セッションのレポート

サステナビリティの精神を体現―サステナブル・ブランド国際会議2019東京(3)
・「SDGs:マッピングの一歩先」セッションのレポート
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セッション2 次世代CSV(価値創造)経営とは何かーSDGsにより社会をリ・デザインするー

本セッションは、官産学の経験を踏まえてCSV/SDGsを推進されている笹谷氏がファシリテーターを務め、SDGsの達成に向けて先駆的な取り組みをしている企業が集まりました。
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ファシリテーター
株式会社伊藤園 顧問 笹谷 秀光氏
【パネリスト】
富士通株式会社 理事 / CTO補佐 梶原 ゆみ子氏
日本航空株式会社 地域活性化推進部 部長 竹田 亨氏
カルビー株式会社 人事総務本部 執行役員 / 人事総務本部本部長 武田 雅子氏
住友林業株式会社 筑波研究所 理事 / 筑波研究所長 中嶋 一郎氏
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発信型三方良しで進める日本のSDGs

笹谷氏は、我が国がSDGs先進国になるためのアクションとして、
1Society5.0
2)地方創生
3)次世代・女性の活躍
の3つが重要と述べ、笹谷氏が編み出した「発信型三方良し」をベースに議論が進みます。

笹谷氏によれば、日本では、現在の滋賀県の近江商人の経営理念である「三方良し」(自分良し、相手良し、世間良し)のように、元々SDGsに近い理念がありました。但し、「人知れず社会に貢献しても、わかる人にはわかる」という考えで、あえて企業が自ら発信しないことが多かったとのこと。しかし、このグローバル社会においては発信することが重要であることから、「『発信型』三方良し」という概念を提唱されています。これからの時代の新たな経営戦略として、企業が掲げるべき考え方と言えるでしょう。

ファシリテーターを務めた笹谷氏
<富士通の取り組み>
富士通の梶原氏は、(1)Society5.0の実装というテーマで、人間中心のAI社会を目指す同社の取り組みとして、①AIソリューションを導入して、風力タービンの品質検査の精度向上と時間短縮をした事例や、②遺伝子情報を活用するゲノム医療の実現、③新たな価値を共創する医療プラットフォームの創設などを紹介。

日本航空の竹田氏
<日本航空の取り組み>
日本航空の竹田氏は、(2)地方創生をテーマに、JALグループが行っている地域活性化の活動(清掃、高齢者宅の除雪、国際交流)や特産品の6次産業化サポート、地方の農水産物の海外展開サポートの様子を紹介。
住んでいる方の笑顔が見たいという一心で地域創生に取り組んできました。」と竹田氏。地域のブランディング活動をサポートすることで、地域の価値が向上し、行ってみたい、食べてみたいという同地域の関係人口が増える。国内外におけるヒトとモノの循環・流動の拡大が、地域を元気し、地域の持続的な発展につながるという考えの下これらの活動に取り組む。その根本には、飛行機は環境負荷が高いため、その代わりに何かやらないといけないという思いもあるそうです。
カルビーの武田氏

<カルビーの取り組み>
カルビーの武田氏は、3)次世代・女性の活躍をテーマに、①同社が多様性を重視した取締役体制を整えていること、②ダイバーシティ=多様性の推進に取り組み、5年連続でなでしこ銘柄に選定されるなど第三者から多数評価されていること、③多様性を生かすための仕組みとして、フリーアドレス制のフラットなオフィスで社長とも気軽に話せる社風がイノベーションを生み出す源泉であること等を紹介しました。

<住友林業の取り組み>
住友林業の中嶋氏は、「発信とイノベーション」をテーマに、同社のサステナブル経営を紹介。中嶋氏によれば、今年で創業328年目をむかえる同社は、銅山備林の経営で荒れた山を再生するため、1890年代から大規模な植林を開始。SDGsが出てくる前から、永続的に植林と木材生産を繰り返す「保続林業」を掲げ、本業での植林を含むサステナブル経営を行ってきた旨を強調。そして、同社のW350計画を紹介しました。
同社HPより

W350計画は、1691(元禄4)年の創業から350周年を迎える2041年を目標に高さ350mの木造超高層建築物を実現する構想です。まずは6階建ての中規模木造建築から始め、徐々に高くしていく計画とのこと。
「より良い社会を作っていくために、もっとRenewable(再生可能)なものを使っていきませんかという問いかけを各方面にしている」という中嶋氏。国交省、林野庁や東大、企業など国内のステークホルダーのみならず、海外から多くの反響があったということです。
「ESG投資が進んでいる海外では、今や木造のビルに入ることが企業のステイタスになりつつある」と木造建築が求められている世界の潮流を紹介しました。
同社HPより

SDGsによってCSVをバージョンアップ

CSVの3類型を紹介する笹谷氏
ファシリテーターの笹谷氏は、「(長くサステナブルな取組を続けてきた)日本企業からすると、SDGsは今更感があるかもしれない。ただし、今まで行ってきた取組をまとめるのに役立つ。また、SDGsは海外への発信ツールとしても有用」と述べた上で、「企業は、SDGsによって、経済価値と社会価値の同時実現を目指すCSVをバージョンアップできる」とし、「従来のCSRと異なり、経営マターになったのが重要だ」と、現在のSDGs/CSRを取り巻く大きな流れを強調しました。

続いて笹谷氏がCSVの3類型とSDGs経営の5要素を解説。
<CSVの3類型>
(1)製品と市場を見直す
(2)バリューチェーンを見直す
(3)産業集積(クラスター)を形成する

SDGs経営の5要素>
(1)普遍性:内外で幅広くロールモデルとなり得る取組であるか。
(2)包摂性:「誰一人取り残さない」の理念で取り組んでいるか。
(3)参画性:主体的に様々なステークホルダーを巻き込んでいるか。
(4)統合性:経済・社会・環境の分野における相互関連性・相乗効果を重視しているか。
(5)透明性:自社・団体の取組を定期的に評価、公表しているか。

各企業はどの要素を重視しているかを聞くと、
  • 富士通は包摂性。「誰一人取り残さない」の理念で、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」を推進。ICTで人々を幸せに、を掲げている。でも、日本航空さんの「笑顔を届ける」という表現は具体的で分かりやすいですね。(富士通・梶原氏)
  • JALは参画性。笹谷さんのスライドのブドウ絵が分かりやすい。軸があって、実が増えていく。活動しているとこのブドウのように仲間が増えていく。仲間が増えると元気と感動とつながりも増えて、とても楽しい。日本航空・竹田氏)
など、パネルディスカッションならではのシナジーが生まれ、登壇者もフロアの参加者も共に学ぶ良い機会となりました。

すると笹谷氏はすかさず「このサステナブル・ブランド国際会議の場は『目標4:質の高い教育』。そこから『目標17:パートナーシップ』につなげる。学んで、拡散していくことが大切。」とSDGsの目標に添って、私たちのアクションを促しました。

SDGs経営の5要素についてディスカッション

最後に、笹谷氏は、「SDGsの目標17の図は、右下が空いている。もしかすると目標18は『すべての人を笑顔に』かもしれませんね。日本から是非提案していきましょう。」と会場を盛り上げました。
日本企業が様々な取組を進めていることを知った、学びの多いセッションでした。笹谷氏の重層的なご経験を基にした様々な提案は、2020年SDGsオリンピック・パラリンピックが近づくにつれ、益々重要となりそうです。学びの次は拡散。早速出来ることから始めてみましょう。


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