メディアが貢献できるSDGsとは


「日本のメディアは遅れている」という言葉も飛び交う中、6月10日、フジテレビとSansanによるSDGsセミナー「SDGsがもたらす企業経営のメリット」が開催されました。フジテレビCSR推進室長の北島氏は、メディアの「つなぐ」役割を再認識し、「色々な企業や人とコラボしたい」と強調しました。


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クラウド名刺管理サービスで有名なSansanの本社で開催された今回のセミナー。
「出会いがイノベーションを生み出す」をミッションとしている同社は、講師と参加者、また参加者同士のディスカッションを大事にしながら、様々なセミナーを企画しています。

今回のセミナーは、株式会社フジテレビジョン総務局放送文化推進センターCSR推進室 室長の北島剛史氏がゲスト。
北島氏は、「SDGsとメディアの役割」と題して、同社の取り組みを紹介します。

メディアとしての、本業を通じたCSRとは

フジテレビは、2006年に民放初のCSR専門部署を設置しました。
CSR専門部署がある民放TV局は、同社とTBSのみとのこと。
とはいえ、フジテレビもCSR専属の社員は3名(+兼務2名)で、その他各部署から選出された約50名メンバーと、CSR活動の企画・立案などを行っているそうです。

北島氏が協調されていたのは、「本業を通じたCSR」

クリエイティブのプロ集団として”発信力”を活かし、社会に貢献できるCSR活動をすることをモットーとされているとのこと。
具体的には、子供たちを対象にした食育出前授業やスピーチ、インタビュー、発声練習などを学べるアナウンサーの出前授業などを行っています。
また、被災地復興支援イベントの開催にも力を入れています。ニュースで事実を伝えるのが報道の仕事ですが、伝えた後にCSRで何が出来るか、を考えた結果、避難所生活が続く人たちの生活に楽しみを作ろうと、映画や映像などを使ったイベントを開催することになったそうです。



そうこうしているうちに、2015年、SDGsが誕生します。

「本業を通じたCSR」に立ち返ってみると、我々の本業は番組を作ることではないか。
伝えることには取り組んで来たけれど、本業で実施できているのか。
そんな振り返りを経て、放送を通じたCSRに取り組もう、と決意を新たにフジテレビが取り組んだのが、「環境クライシス」です。

圧倒的な映像の力で深刻な環境問題を魅せるこの番組、実は北島氏率いるCSR推進室が制作に関わった最初の番組でした。(「環境クライシス」の内容についてはこちらの記事でご紹介しております。)
問題はスポンサー探し。北島氏は、「一歩間違えると公共放送のようになってしまう。フジテレビらしさを出すには。こういう番組だからこそ共感してくれるスポンサーもあるのでは。このような骨太の番組のスポンサーになることでその企業のCSRにもなる。そんな新しいセールスが出来るかもしれない」と考えました。
苦労が身を結び、これまでに3本の番組を放送することが出来ました。


「フューチャーランナーズ」を会場で視聴
この経験をもとに、今度はSDGsをテーマにした日本初のレギュラーミニ番組を放送することになりました。「小さな番組だけれど最初の一歩が大事」という北島氏。
番組でも、小さな活動を地道に進めている方や草の根な活動を継続的にされている方をフューチャーしています。

パートナーシップ、コラボ、つなぐ

SDGsの目標17は、パートナーシップの活性化。
北島氏は、「パートナーシップという言葉が出てきてからは動きやすくなった。メディアが元々『つなぐ』役割があるから」と言います。
制作チーム、番組内で紹介する人たち、スポンサー、視聴者など、いろいろな人がメディアを介してつながっています。そこに国連で採択されたSDGsが共通言語となり、パートナーシップの重要性が改めて認識されたということなのかもしれません。

北島氏は、CSR室長になってからの3年間を振り返り、
「この3年間で、変化がたくさん続いている。CSRの番組を作ることもはじめてだったが、周りの環境もどんどん変わってきている。一人、一社ではできることが限られている。いろんな社会、他団体と一緒になることで、共通価値を創造できる。」と言います。
アナウンサー出前事業は住友生命と組んで学童保育での出前事業に広がり、食育事業はミキハウスとコラボするなどの動きが生まれているそうです。
「お互いがお互いのできることをやって、参加者も主催者もハッピーになって帰れる。」と言い、「コラボできることがあれば、是非お声かけいただければ。」と会場に呼びかけました。

SDGsを社内で推進する意義とは

続いて、安井肇氏(モルガンスタンレーMUFG証券株式会社 顧問/Sansan株式会社 シニアアドバイザー)が加わり、パネルディスカッションが始まります。

まず安井氏は、「若い世代の社会貢献意識」に関する内閣府の調査結果から、近年若年層や女性を中心に社会貢献意識が高まっていると指摘します。
「企業にとっては、トップラインを伸ばすことがCSRではなく、優秀な人材をどう集めるかという点が争点になってきており、人件費(=コスト)ではなく人的資源という観点から、やる気のある、意識の高い人を採用できた方が効率がいい。SDGsで本業を通じた社会貢献を明確化すると、良い学生のリクルートに成功する大きな鍵になる。これがSDGsに取り組むことの一つの意義。」と安井氏は述べます。

もう一つのSDGsの意義としては、デジタル時代の社内カルチャーの醸成
デジタル化が否応なしに進む今、変化は避けて通れない。けれども人間は本来変化を嫌うもの。
自分が入社した環境では、あれで良かったけれど、今の環境で適切なのだろうか?
変化が激しい今だからこそ、私たちの会社は何のためにあるのだろう?と原点に戻る考え方が必要になってくる。SDGsが原点の振り返りを促す。
そこからデジタル化に対応できるようになる。変化への対応力が生まれる。

そして、デジタル社会は変化が激しい。新しい商品が次々と出てくる。
イノベーティブなことはルールが出来る前に出来上がる。
デジタル社会はあらかじめルールが決まっているわけではない。
でも、新商品が永続的に売れ続けるためには、お客さんにとってメリットがある、被害が出ない、ということが大事。

こうなると、従業員一人一人が、社会の期待に反しない行動をとることが大事になってくる。従業員が正しく動けるカルチャーがあるかどうか。
それを醸成するために、SDGsがある。
SDGsを使って、自社の意味を問い直す。自社の存在意義が社内に浸透する
そうすると、自分の目標利益を達成するために、お客さんの利益を踏みにじるようなことをしなくなる。

ということで、SDGsを利用して社内カルチャーを醸成することで、変化に対応でき、コンプライアンスを自然と守ることの出来る組織になっていく、攻めと守りを両立できるとのメッセージでした。



参加者ともインタラクティブに議論
参加者の一人、環境省の藤田道男氏は、自身が関わる「生物多様性民間参画ガイドライン」を紹介しつつ、「FSC認証の紙を使うなど、認証品を使うことも一つの方法。サプライチェーン12番、域保全の15番などSDGsゴールにも貢献出来るし、従業員のインセンティブになるのでは。原材料調達する事業の場合、認証品を使うだけでリスクの低減になり、コンプライアンスの点でも意義があるだろう。」と述べるなど、会場からも随時意見が投げかけられながら、インタラクティブな議論が繰り広げられました。

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パートナーシップ、コラボという言葉をしきりに使われていた北島氏。
セミナー終了後にお話を聞くと、「このCSRSDGsというワードに対して、我々フジテレビの、TVというメディアの、出来ることの大きさに気付いた。我々を使って発信して欲しい、だから色々な人、企業とコラボしたい。」とおっしゃっていました。
そんな、3年間でCSR活動を通して改めて気付いた自分たちの提供価値を、より広げるため、しきりにパートナーシップ、コラボとおっしゃっていたのですね。
老若男女、全国どんな街、村にでも存在するであろうTVは、最強の発信プラットフォームなのかもしれません。

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