「産業革命×デジタル革命」で主流化が進むサステナブルファイナンス

2019年6月、気候変動イニシアティブ(JCI)及び国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)主催の「サステナブルファイナンスに関する東京ダイアログ」が開かれました。

新しい金融の動きーサステナブルファイナンス

「サステナブルファイナンス」とは、持続可能な社会を実現するための金融のことで、2015年のパリ協定採択以降、特に欧州連合(EU)において、「サステナブルファイナンス」確立に向けた取り組みが積極的に行われてきています。
野村資本市場研究所では、「サステナブルファイナンスの確立は、環境、社会及びガバナンス(ESG)関連の政策課題への対応という観点のみならず、域内の資本市場の活性化の一環として、重要施策に位置付けられている。」(江夏 あかね、富永 健司、「欧州におけるサステナブルファイナンスの確立に向けた取組み」『野村資本市場クォータリー 2018年春号』)と述べています。
ESG要素だけではなく、包括的にサステナブルな金融を確立することが、今般の地球温暖化や金融市場の安定には欠かせなくなってきたと言えるでしょう。

2019年3月15日、金融庁が「チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー」という異例のカタカナ人事を行ったことにも、日本政府がサステナブルファイナンスに力を入れてきていることが伺えます。

東京都のサステナブルファイナンス戦略

今回のイベントに登壇された小池 百合子東京都知事も、「『サステナブルファイナンス先進都市、東京。』を進めていく。」と述べ、世界・地球を金融の力でサステナブルにしていくために東京が果たせる役割について言及しました。
特に、サステナブルファイナンスを推進する世界都市ネットワーク「サステナビリティのための金融センター(FC4S:Financial Centres for Sustainability)」への加盟を、この場で初めて表明しました。FC4Sは、2017年に国連環境計画(UNEP)主導で立ち上げられ、現在ロンドンやニューヨーク、上海など26都市が加盟しています。

小池都知事は今回、FC4Sへの加盟を決断した背景として、「都市間競争にさらされている東京を、環境という部分で少しでも付加価値をつけられれば。」と発言。
東京都は、日本の自治体で初めてグリーンボンドを発行しており、毎年200億円規模が即日完売になる売れ行きとのこと。これを受け、「2020年の東京オリンピック・パラリンピックでもグリーンボンドを原資にした環境政策を行っていく。環境と金融の好循環を、2020大会を機に世界に発信していく。」と意欲を述べました。

他方で、発信が十分に出来ていないという問題意識にも言及しており、今回国際的なサステナブルファイナンスのネットワークに加盟することで、より世界への存在感を強めていきたいという思いが感じられました。


サステナブルファイナンスの主流化に向けて

今回のイベントでは、国連、政府、金融、企業など実に多様かつハイレベルな登壇者で溢れていました。
中でも印象的だったのは、アル・ゴア 米国 元副大統領のビデオメッセージです。
「サステナビリティ革命は産業革命のような規模、デジタル革命のようなスピードで進むだろう。
イノベーション、気候変動対策など、大体なアクションが唯一の選択である。」との力強いメッセージが会場に投げかけられ、その後のパネルディスカッションでも、サステナブルファイナンスのスピード感については、様々な登壇者が度々触れていました。

海外からUNEP、OECDなどが参加したハイレベルパネルディスカッションでは、「グリーンファイナンスやサステナブルファイナンスをどのように主流化できるか。」という問いがモデレーターの高田 英樹氏(Green Finance Network Japan 事務局長/財務省)から投げかけられ、パネリストは各々の立場から、主流化の現況や主流化の加速に必要なことなどを共有しました。

OECD環境局でグリーンファイナンスアンドインベストメント チームのリーダーを務めるロバート・ヤングマン氏は、
  • 具体的な事例を出していくことが大事。
  • 突破口的な変化が緊急に必要になっている。グローバルなCO2排出を一刻も早く減らさないといけない状況。
  • 広さにおいても深さにおいても、短期的な行動に対する見方についても、これまでと異なる見方をしないといけない。
  • グリーンファイナンスに対して、もっとシステマティックな見方をしないといけない。
  • 気候関連のリスクと金融の安定性をモニターしていく。サステナブルファクターを金融機関のポートフォリオに入れていかないといけない。
UNEPでFC4Sのマネージング・ディレクターを務めるステファン・ノラン氏は、サステナブルファイナンスの主流化にかかる地方政府の役割として、
  • 多くの都市は東京都のような規模ではないため、より国の指示下にあるなど状況が異なる。その中で検討をしなくてはいけない。
  • 各国の首都レベルの都市では、ポリシーイノベーションがキードライバになっている。グリーンボンドの発行、枠組みを作って、様々な資金を導入していくことが必要。
  • 特に、政府が抱えている課題に関して、未公開資本を公開して、リターンをつけていくことが重要。
  • 情報公開に取り掛かると、あまりにも多くの情報が集まってきて、それをどのように処理・整理したらいいかが分からないのが現状。
  • だから枠組みを作ることが大事。データが手に入ったら、使えるような形にして公開する。政策決定者に届くようにしないといけない。
CDP(注)のエグゼクティブチェアを務めるポール・ディキンソンは、
  • クライメントフレンドリー(環境に優しい)というマーケティング用語。消費者が生産者を変える。インターネットで気候変動は無視できない。
  • ファイナンスには大きな役割がある。新しい役割がある。投資家がどんな影響力を行使できるか。システム変化を投資家が支持するべき。
  • CDPが発足したのは、特に欧州で各国政府がグローバルな投資の規制が設計出来ていなかったという問題があったから。発足から15年、現在ではTCFDが出てきた。
  • TCFDは気候変動に係る政策・戦略が財務状況に影響を与えるとした点で大変興味深い。非政府組織のCDPと異なり、TCFDは各国の金融当局などが参加し、マーケットニーズに合わせてガイドラインを策定している。TCFDが各国で法律になる日が来れば歓迎したい。
(注)気候変動など環境分野に取り組む国際NGO。企業に対して気候変動への戦略や具体的な温室効果ガスの排出量に関する情報開示を求め、その回答を分析・評価して、投資家に開示する取り組みを行っている。

三井住友フィナンシャルグループ企画部サステナビリティ推進室長かつ21 世紀金融行動原則共同運営委員長を務める末廣孝信氏は、「非財務をどのように評価して投資につなげるかが喫緊の課題。サステナブルファイナンスは、きれいごとじゃない。企業価値向上が本当に株につながる、というのを示さないと、お客様にも勧めることが出来ない。」と理念だけでなく実利での説得性を持たせることの重要性に触れました。

東京海上日動火災保険株式会社経営企画部CSR室長の小森 純子氏は、「評価される側として、評価機関がどのように評価しているのかが見えないので、一喜一憂している。」と本音を述べつつ、「パリ協定の2度目標に移行するために具体的なポートフォリオの変更が必要、という声を受け、保険という本業を通じて、自動運転や再エネの引き受けなどを行っていく。リスク評価、モデリング技術の定量化など保険業が得意とするところで、役割を果たせれば。」と語りました。

会場からは、「この場ではサステナブルファイナンスの重要性が共有されたが、国内の金融機関でよりスピード感を上げていくためにはどうしたら良いか?」、「自分だけの金銭的リターンを求める株主や消費者に対してどのように啓蒙・教育していくべきか?」と言った質問が出されました。


各パネリストが回答した後、モデレーターの高田氏は、「サステナブルファイナンスの主流化に大事なことは、この会場にいない人をどう説得するか。」と述べ、現在関心が高くない層に対するアプローチの重要性を強調し、締めくくりました。 

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