国際金融都市を目指す東京都、ついに世界で主流化するESG投資の普及に着手


2019年2月5日、六本木ヒルズにて東京都主催「東京金融賞」表彰式が開催されました。
「東京都金融賞」は、2017年11月に東京都が発表した「国際金融都市・東京」の柱として新たに創設された取り組みです。第1回目となる今年度は、金融とIT(情報技術)を融合させたFinTechを活用した「都民ニーズ解決部門」と、環境・社会・企業統治に配慮したESG投資の普及に努めた企業を表彰する「ESG投資部門」の2部門から計7社が選ばれました。

表彰式では、小池百合子知事が「米中貿易摩擦やBrexitなど世界が混迷を極める中で、東京は都市間競争で勝ち残らなくてはならない。世界から人材、資金、情報、技術が集まる国際金融都市へと東京を磨き上げていきたい」と意気込みを語り、受賞企業に記念品を贈呈しました。
 小池知事は、「東京金融賞の創設を議論していた約1年前は、ESGのEは?Sは何だ?という会話も垣間見られたが、ESGのコンセプトをいよいよ金融の世界だけでなく、東京都でも普及していこうとESG投資部門も同時に設けた。」と述べ、当初は金融を用いて社会的課題/都民ニーズの解決に貢献する革新的な企業を表彰するという観点から「都民ニーズ解決部門」を創設したものの、国際金融都市を標榜する東京都にとって、世界で主流化しつつあるESG投資を無視することはできなかった状況を感じることができました。今回、ESG投資部門を設けたことで、より多くの人たちにESG投資を知ってもらう機会になったのは間違いありません。

また、表彰式では、各受賞企業によるプレゼンの他、両部門に関する有識者の講演が行われました。
都民ニーズ解決部門では、森・濱田松本法律事務所の増島雅和氏が「東京都における金融課題と都民ニーズの実現」と題して講演。
増島氏は、「FinTechが追及している価値観は金融機関が追及している価値観とは異なる」として、「個人金融、中小企業金融など、これまでの金融サービスが解決できなかったことを、データとテクノロジーを使って、利用者の側に立って行うのがFintechである」と説明しました。

ESG投資部門では、PRI(Principles for Responsible Investment:責任投資原則)ジャパンヘッドの森澤充世氏が「ESG投資の世界の潮流と東京での拡大傾向」と題して講演。
2005年のフレッシュフィールドレポートでは「ESG問題を考慮してもよい」であったものが、2015年の21世紀の受託者責任レポートで「重要なESG課題を考慮しないことは受託者責任への違反になり得る」と指摘され、ようやく「ESGを考慮すべき」になったと紹介しました。
この言説に影響を受けたのがアメリカで、2015年以降、アメリカでもESG投資が少しずつ伸びてきているものの、それでもまだアセットオーナーが長期投資を長年けん引してきたヨーロッパがESG投資の中心となっています。
森澤氏によれば、アジアのESG投資はこれからであるが、日本では日本版スチュワードシップコード制定後からPRI署名機関が徐々に増えてきているとのこと。他国のPRI署名機関がアジアに進出する際、東京に拠点を構えるケースが増えている点を指摘し、「この機を逃さず東京を国際金融都市に」と強調されました。
折しも、2020年のPRI年次総会(通称:PRIパーソン)、東京での開催が決定。「オリンピック直後の開催予定で、世界中の金融関係者が日本に来る。東京から責任投資を広げていく良いきっかけになるだろう。」と森澤氏は締めくくりました。

満員の会場




受賞企業は以下の通り。
【都民ニーズ解決部門】
1位 株式会社justInCase
2位 TORANOTEC株式会社
3位 グローリー株式会社
【ESG投資部門】(順位なし。アルファベット順)
・Neuberger Berman East Asia Limited
・Robeco Japan Company Limited
・SOMPOホールディングス株式会社
・三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社
各受賞企業の評価ポイントはこちら。(東京都HP)

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